「…今夜来い」

その一言だけで、身体のどこかがじわりと熱くなるような感覚に襲われる。










夜が一番深くなる頃、は廊下を静かに土方の部屋まで歩いた。
外では鈴虫か何かが鳴いている。
蒸し暑い夜なのに、足に触れる木の床がひんやりと冷たくて気持ちが良かった。




「土方さん」

部屋の前まで来て小さな声で呼ぶとすぐに、入って来い、という声が空気を揺らした。







土方はを抱き寄せ、おろした髪を撫でる。

「久しぶりだな…」

お前を抱くのは、と付け加えると、の唇に触れた。
触れるだけの口付けはやがて激しさを増し、二人は互いの舌の熱を感じながらそれを絡ませ合う。
土方は唇をの首筋に這わせれば、の白い肌にはみるみるうちに真紅の痕が浮かび上がってゆく。
まるで、雪景色の中に咲く紅い花のように。



土方はを布団の上に倒すと、器用にの帯を解いた。
するりと脱がせると、の肩、胸、すべてが露わになる。
その肌の白さ、華奢な身体に土方はあらためて眩暈を憶えた。


「白すぎて怖ぇな…」

に聞こえるか聞こえないかという声で呟くと、土方の骨ばった手はの胸を包んだ。
みずみずしい肌に、まるで手が吸い付いていくかのよう。
土方はの胸の先にある桃色の頂を含んだり、舐めたり、噛んだり、と執拗に攻め立てた。
波のように襲ってくる感覚に、は身を捩じらせ喘ぐ。


「…んっ…はあ…ぁ」

の艶やかな声に、土方は自分がますます高ぶっていくのを感じた。
普段の小生意気な様子からは想像も出来ない、彼女の表情。
それが他の誰のものでもなく自分だけのものであるという優越感。


誰のものでもない、自分のために咲く華。
所詮自分はその華の魅力に溺れた、雑草。


どんなに汚くてもいい、こいつが自分のものならば。
たとえ雑草でも、人殺しでも構わない。


「… 恋はひとを狂わせる」




「ん?」
「いや、なんでもねえ」

少し上がった息でそういうと、土方は胸を弄ぶ手に力を入れ、乱暴にの唇を貪った。



2004.05.27(2010.03.31改訂