真っ白く積もっていた雪もようやく融けはじめた四月の蝦夷。 それでもまだ外に出るには寒く、風も冷たい。 「市村です」 ドアをノックするコンコンという音とともに、自分の小姓である少年の声が聞こえた。 鳥羽伏見の戦いから一年と三ヶ月が過ぎ、少年独特の高かった声はすっかり低くなっている。 窓際から外を見ていた土方は、入れ、と短く返事をした。 明治二年四月、土方歳三は箱館にいた。 next