ゆ ら り 月 >>第一章・一
が屯所に来て二日目の朝
は歩の手伝いとして近藤から隊士たちに紹介された。
「男所帯、君に手を出す輩もいるだろう」という近藤の意見で
は近藤の大事な友人から預かっている娘、として紹介されることになった。
さらにその髪色で日本人というのは信じてもらえないだろうと、異人との混血とも決められた。
流石に局長と関係のある人間から預かっているとなれば、隊士たちも簡単には手を出せない。
手を出し、それが局長らに知られれば、待っているのは切腹。
切腹がかかっていれば流石に混血だと興味本位で手を出す輩も減るだろう、という睨みがあった。
が未来から来た人間だというのは秘密事項だった。
知っている鉄之助・沖田・永倉・山崎姉弟、そして本人には土方と近藤から口止めがされている。
「ちゃん、これ運んでやー」
「はい」
「そこの着物、ちょっと取ってくれん?」
「あっ、はい」
は少しでも歩の手伝いをしようと必死で働いた。
食事作り、配膳、片付け、洗濯、掃除など、歩の後ろをついていっては勝手を教えてもらっている。
―――
ずっと働いていれば現代のことを考えなくてすむ。
時間があればあるだけ考えてしまう現代のこと。
父親や正平さんたちは今頃自分のことを探しているのだろうか。
学校はどうなっているんだろうか。
頭の中には不安が浮かび、溜まっていく。
それは決して消えずに、考えれば考えるだけ膨れ上がっていく。
―――
頭が痛い。
は歩の仕事に打ち込むことで、頭の中に溜まっていく不安を見て見ぬふりをした。
こうしては丸二日間ぶっ続けで働いた。
・・・そしてまた、眠れぬ夜を迎える。